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木部への塗装
木材が外装に使われている箇所は、外壁本体などと比べても非常に傷みやすいといえます。
木材は天然素材のため、塗装などで保護しなくては雨や細菌の影響で、すぐに腐ったりカビが生えたりしてしまうのです。
さらに、木材を保護するために施している塗装も、通常の外壁に比べ劣化しやすくなります。
そのため木材でできている部分は、外壁塗装以上にメンテナンスには気を使う必要があります。
今回は外壁塗装より気をつけたい一軒家の外装の木部塗装について解説します。
1 木材の特徴
木部塗装に通常の外壁塗装よりも注意しなければならない理由は、木材特有の特徴があるからです。
・調湿機能による伸縮
木材は、調湿作用を持っています。
これは、湿度が高いと湿気を吸い込み、湿度が下がると湿気を吐き出す作用のことです。
この作用があるからこそ、水分過多による腐食や乾燥によるひび割れをある程度防ぐことができます。
しかし湿気を吸い込んだり吐き出したりするわけですから、それに伴い木材自身も膨張と収縮を繰り返します。
そのため薄くて硬い塗膜が追従できずに、どうしても剥がれたりひび割れたりしやすくなります
・腐食し易い
木材は天然素材なので、バクテリアや細菌の影響で腐食していきます。
もちろん腐食防止の対策は施されていますが、それでもセメントやモルタルのような人工物と比べると、腐食に対して弱い材料と言えます。
さらに、腐食防止の塗料や薬剤も、時間の経過と共にどんどん効果が薄れてきます。
だからこそ、定期的に塗装を塗り替え、しっかりと保護してあげることが木材では非常に重要なことなのです。
適切なメンテナンスを実施していれば、長期に渡り腐食を防ぐことは可能です。
・木目の意匠性
木は木目(板目、柾目、杢目)をもち、それ自体を意匠(デザイン)として捉えることができます。
2 木部塗装の注意点
・ひび割れへの対策
木材は膨張と収縮を繰り返すため、塗装にひび割れが入りやすいという弱点があります。
これこそ、木部塗装が長持ちしない最大の原因です。
ただ、木材に調湿作用がある限り、膨張と収縮を抑えることはできません。
そのため、ひび割れに強い塗料を選択することが望ましいとなります。
塗装がひび割れたり剥がれたりすると、木材が雨水や紫外線の影響を直接受けることになります。
こうなると木材はすぐに腐食してしまうので、劣化に合わせた素早いメンテナンスが重要です。
・下地処理
木部への塗装は、非常にはがれやすいという弱点があります。
そのため、しっかりと塗料を密着させるための下地処理が、外壁などに比べると非常に重要になってきます。
それから、外壁材に木材を採用しているケースでは、木目を活かすためにクリア塗装を施していることも多くあります。
このクリア塗料は、塗り替えの際はきちんと落として塗装を行わないと、塗装の密着性が悪くなるおそれがあります。
塗りムラの原因ともなりますので、しっかりと古い塗膜を落とす下地処理が、木材部分ではとても重要です。
3 木材保護の2つのタイプ
外壁塗装や屋根塗装などの場合、素材との密着機能の下塗り材、素材保護の上塗り材、といったように塗膜で「覆う」工程となるのですが、上記の「木材の特徴」で上げました調湿機能による伸縮性があるため、このような「塗膜で覆う」塗装では木材の伸縮に追従できない硬い塗膜が剥がれの原因になっていました。
そこで木材内部に浸透させ、木の呼吸をさまたげることなく保護する機能を持つ塗料が開発されました。
いままでの塗膜で覆う「造膜型」の塗料に対し、この浸透して保護するタイプを「浸透型」の塗料と呼びます。
昨今では「造膜型」の中にも木部の伸縮に追従するだけでなく、防虫・防腐剤が添加された木部専用塗料も開発されています。
ここでは造膜型塗料と浸透性塗料を保護力、質感メンテナンス性の角度から比較します。
造膜型 | 浸透型 | |
保護力 | 木材表面に塗膜を造るため耐水性、耐久性ともに浸透型より強く、エナメル塗料の場合、その保護力は主成分である樹脂の種類によって決定されます。また木材の伸縮に追従する塗膜が望ましい。 | 撥水(はっすい)性や防カビ性は備えていますが、相対的にみた場合塗膜を造らないことから耐水性、耐久性は劣ります。 |
質感 | 塗膜を造るため、触れた際の質感は塗膜の質感になり、木材の質感(木肌)は失われます。 | 表面に塗膜を形成しないため、触った際の木の質感(木肌)は残ります。 |
仕上がり感 | 木目を生かす透明のクリアー仕上げ、木目を生かし着色する半透明の「着色仕上げ」、塗りつぶしのエナメル仕上げ等があり、艶あり、5分艶あり等、艶の調整も可能となります。 | 木目を生かす半透明仕上げと塗りつぶしのソリッド仕上げが可能。基本的に艶を調整する事は不可能で、2~3回塗り重ねによって得られる底艶程度。 |
メンテナンス性 | 浸透型タイプと比較し、メンテナンスサイクルは長いのですが、塗膜が木材の伸縮に対応できずワレ、フクレ、ハガレなどの塗膜劣化を起こすことになります。その場合、下地処理段階の劣化塗膜の剥離作業が欠かせないため、作業性は容易とは言えません。 | 塗膜を造らないゆえ雨による乾湿繰り替えしに弱く、造膜タイプと比較した場合、短期間でのメンテナンスの繰り返しが必要となります。造膜タイプと比較しメンテナンスサイクルは短いですが、ハガレやフクレ等が出来ないため下地処理に劣化塗膜の剥離作業がなく、重ね塗りが可能なため造膜型と比較した場合作業性は容易と言えます。 |
推奨メンテナンスサイクル | ~6年 | ~3年 |
浸透型(キシラデコール 色:ウォルナット)
造膜型(キシラデコールコンゾラン 色:ワイス)
手の届く範囲の木部の塗装は、比較的簡単にDIYでも塗り直しができるように思えます。
しかし、素人の塗装ではどうしても長持ちしないため、頻繁に塗りなおしが必要なことは頭に入れておかなくてはなりません。
メンテナンスをおこたると、木材が腐食して建物がダメージを受けることも考えられます。
劣化の状態によっては塗り重ねるだけではダメな場合もあるので、塗装業者に依頼した方が無難といえます。
複雑な外部の木部の塗装ですが塗替え時や、見積もりの時等にご相談いただければアドバイスをいたしますのでお任せ下さい。